相続土地国庫帰属制度は農地に有効か?

よしむら行政書士事務所 行政書士の吉村です。
今日は相続土地国庫帰属制度の使い勝手についてです。
実際に農地について法務局で事前相談をしてきての感想をまとめてみます。

相続土地国庫帰属制度について知りたい方はこちらをご覧ください。
相続土地国庫帰属制度をご存じですか? – よしむら行政書士事務所 (yoshimura-office.com)

相続土地国庫帰属制度の事前相談とは

相続土地国庫帰属制度では、事前に予約することで法務局に相談することができます。
相談窓口は帰属したい土地を管轄する法務局(本局)となります。
例えば、岐阜県内の土地であれば岐阜地方法務局となります。
帰属したい土地が遠方にある場合には近くの法務局(本局)でも可能だそうです。
支局や出張所ではできないので注意してください。
予約方法は電話又はネットで可能です。
【法務局手続案内予約サービス】ポータル:ポータル (moj.go.jp)
相談方法も電話なのか対面なのかを選ぶことができます。

事前相談のときに必要なもの

事前相談のときに準備しておきたい資料は以下のとおりです。
・登記事項証明書又は登記簿謄本
・土地の所在が分かる地図
・公図
・地積測量図
・土地の現況・全体が分かる画像や写真

登記事項証明書、公図、地積測量図は法務局で取得できます。

事前相談を申し込む前にやるべきこと

私が事前相談を申し込む前に準備したことは以下のとおりです。
・登記事項証明書、公図の取得(今回の対象地には地積測量図はありませんでした)
 →抵当権などが設定されていないか確認します。
・国土地理院地図などでの所在地確認
 地理院地図 / GSI Maps|国土地理院
・対象地の地目が「田」だったので農地区分の確認
 →対象地のある農業委員会で教えてくれます。
・現地調査
・法務局で確認すべきことの洗い出し

現地調査でやるべきこと

可能な限り実際に現地に行くことをおススメします。
私は必ず現地に行くことにしています。
実際に行かないと分からないことは多いです。

現地で確認すべきことは以下のとおりです。
・対象地の所在
・境界点の有無
・申請できない土地や承認されない土地に該当しないか
 建物が建っている、道路敷になっている、お墓の土地になっている、工作物や車両が放置されている、など。
・写真撮影
 近景写真、遠景写真、境界点(杭や鋲など)を含む境界が分かる写真を撮影します。

遠景写真ですが、農地や山林などの場合、国土地理院地図の航空写真でも大丈夫です。
というか、その方が便利です。

事前相談

事前相談は法務局の職員の方が担当してくれました。
予約の段階で代理人(行政書士)として申込したせいか、どんどん本題に入っていきました。

こちらからは現地調査の写真や登記事項証明書、公図を見せながら現況について話しました。
・対象地は農業振興地域内の農用地であること
・未耕作地であること
・申請できない理由になりそうな建物、工作物、放置されているものはないこと
・境界点が1点しか見つからなかったこと(4筆中…)
・境界杭の復元について
・負担金の金額の確認

職員の方の見解は以下のとおりでした。
・現況写真や農業振興地域内の農用地であることから建物や工作物、埋設物もないだろうと思われる
・申請するのに大きな問題はないのではないか
・負担金は農用地なので高くなる
 ただし、10年を想定した管理に必要な費用なので申請を考えている人にはわかってほしい

見解を聞く限り、申請はできそうですが課題も示されました。
・土地改良区の賦課金は清算してから申請しなくてはならない
→『国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき申請者の金銭債務を国が承継する土地』に該当するため
 実際に3件不承認となっている
・境界杭について
→土地改良所在図をもとに復元したほうがいい
 境界確定、官民査定まで求めるものではないが、今回の土地は水路、道路に面している
 その場合、市町村が根拠なく認めるとは思わない
 申請時の添付資料でもある境界を示した写真撮影にも必要

申請はできそうですが、問題があることもはっきりしました。
これだけでも相談に行った甲斐がありました。

事前相談後の対応

土地改良区の賦課金の清算について確認しました。
まずは農業委員会にどこの土地改良区に該当するのか確認し、土地改良区に問い合わせました。
受益地ということで賦課金の清算が必要でした。

境界杭の復元については知り合いの土地家屋調査士の先生に教えてもらいました。
隣接する土地の所有者が市町村の場合、官民査定まで求めないとはいえ、ほぼ同じようなことをやることになるそうです。
現地見て分かりました、とはならないので書面で提出することになる、と。
4筆だと結構するよ…、と言われました。

だとしても

今回の対象地のように農業振興地域内の農用地の場合、簡単に処分することはできません。
そもそも原則「転用不可」です。
農振除外を申請して、農地転用許可申請して…。
ハードルは高いですし、手続きも煩雑になります。

法務局の方によると、農地の申請は多いそうです。
多少の費用がかかっても申請する判断をされるそうです。

実際の申請状況について確認してみましょう。
①申請件数:1,349件
②地目別 田・畑:522件 宅地:487件 山林:198件 その他:142件

帰属が認められた件数です。
③帰属件数:48件
④種目別 宅地:25件 農用地:10件 森林:2件 その他:11件
(法務省HPより 令和5年11月30日現在) 

申請が多いのは「田・畑」となっていますね。
「その他」って気になりますね。

まとめ

農用地の相続土地国庫帰属制度について相談してみてのまとめです。

・事前相談は予約制
・事前相談前に現地確認を忘れずに
・土地改良区の賦課金の清算についての確認を忘れずに
・境界杭の復元には費用がかかる
 とはいえ、自分で勝手にやらない方がいい
・境界杭を復元しないと境界を撮影した添付写真が作成できない
・農用地の負担金は高い…
・とはいえ、農用地を相続して困っている人にとっては合法に手放すことができる

相続土地国庫帰属制度は農地に有効か?” に対して1件のコメントがあります。

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