相続土地国庫帰属制度の申請、帰属に必要な費用とは・・・農用地の場合

よしむら行政書士事務所 行政書士の吉村です。
昨日は笠松町でも雪が降り、朝から夕方まで大雪警報が発令されるという珍しい一日になりました。
幼少期には年に一回くらいは15センチくらい積雪したものですが、ここ最近はほとんどありません。
温暖化の影響でしょうか。

前回、『相続土地国庫帰属制度は農用地に有効か?』について書きました。
農振除外、農地転用が必要となる農用地には有効である、という結論に至りました。
まだお読みでない方はぜひ。
相続土地国庫帰属制度は農地に有効か? – よしむら行政書士事務所 (yoshimura-office.com)

しかし、結構な費用が必要となることがネックになりそうです…。
具体的にどのくらいの費用が必要なのかを考えてみます。

農用地の相続土地国庫帰属に必要な費用とは

農用地を相続土地国庫帰属するために必要な費用について考えてみます。

分かりやすくするためにこんな農地であると仮定します。
・現況、登記地目ともに「田」で地積は800㎡の1筆
・農業振興地域内の農用地
・隣接地 東側、西側:農地、北側:市道、南側:用水路
・境界杭は見当たらない
・土地改良区の賦課金を毎年支払っている

仮定された農地にはいくつかの問題点があります。
それらを解決しながら申請、承認、帰属までを考えていきます。

必要となる費用は以下のとおりです。
① 審査手数料
② 土地改良区 除外決済金
③ 境界杭復元の費用
④ 国庫帰属の負担金
⑤ その他の費用

それぞれの費用について解説していきます。

① 審査手数料

① 審査手数料
相続土地国庫帰属を申請する際に収入印紙を貼って納付します。
土地一筆あたり14,000円です。

複数筆を申請する場合、14,000円×筆数が必要です。

② 土地改良区 地区除外決済金

土地改良区から地区除外されるために必要となります。
決済金の額は土地改良区ごとに異なります。
100円~300円/㎡となるところが多いのではないかと思います。

今回は250円/㎡と仮定します。
250円/㎡×800㎡=200,000円
土地改良区の除外決済金は200,000円必要となります。

③ 境界杭復元の費用

相続土地国庫帰属の申請には、隣接する土地との境界点を明らかにする写真の添付が求められています。
今回は境界杭が一つも見つかっていない想定です。
「たぶんこの辺だから」と境界を示すことは避けた方が良いです。
帰属の審査段階で隣接所有者に対して確認が行われるそうです。(法務局の職員さん談)
この段階で認めない人がいると、申請者に対して全員が納得したと認められる資料の提出を求めるそうです。
一定の期間内にまとまらない場合、取り下げを求められることになりそうです。
隣接する土地の所有者に都道府県や市区町村が含まれる場合、さらに精度と証拠が求められます。
土地家屋調査士の先生によると正確に復元した方がいい、とのことでした。

土地家屋調査士の先生に依頼して復元した場合、200,000円~300,000円くらいとのことでした。
広さや折れ点の数によって異なるようです。

④ 国庫帰属の負担金

負担金は申請のあった土地を「宅地」「農地」「森林」「その他」の4つに区分して算定されます。

負担金は土地を10年間管理するために必要な費用として算定されます。

【原則】
20万円(面積にかかわらず)

なのですが、「宅地」「農地」については例外があります。
「森林」については面積の応じて算定されます。
「その他」については20万円となります。

今回は農業振興地域内の800㎡の農用地と仮定しました。
「農地」の例外は以下のとおりですので例外に該当します。
主に農用地として利用されている土地のうち、次のア~ウの農地
ア 都市計画法の市街化区域内又は用途地域が指定されている地域内の農地
イ 農業振興地域の整備に関する法律の農用地域内の農地
ウ 土地改良事業等の施行区域内の農地

例外に該当する場合、面積区分に応じた算定となります。

面積区分負担金額
250㎡以下国庫帰属地の面積に1,210(円/㎡)を乗じ、208,000円を加えた額250㎡
→510,000円
250㎡超
500㎡以下
国庫帰属地の面積に850(円/㎡)を乗じ、298,000円を加えた額500㎡
→723,000円
500㎡超
1,000㎡以下
国庫帰属地の面積に810(円/㎡)を乗じ、318,000円を加えた額1,000㎡
→1,128,000円
1,000㎡超
2,000㎡以下
国庫帰属地の面積に740(円/㎡)を乗じ、388,000円を加えた額2,000㎡
→1,868,000円
2,000㎡超
4,000㎡以下
国庫帰属地の面積に650(円/㎡)を乗じ、568,000円を加えた額4,000㎡
→3,168,000円
4,000㎡超国庫帰属地の面積に640(円/㎡)を乗じ、608,000円を加えた額5,000㎡
→3,808,000円

今回は800㎡ですので
810円/㎡×800㎡+318,000円=966,000円
となります。

負担金が結構な額になりますね。

⑤ その他の費用

その他の費用として考えられるのは以下のとおりです。
・登記事項証明書、公図(事前相談時に必要)
・申請者の印鑑証明書
・固定資産税評価証明書(任意ですがなるべく添付してほしいとのことでした)
・レターパックプラス(郵送での申請)
・その他実費

3,000円~5,000円くらいでしょうか。(一筆の場合)

申請についての事前調査や申請書作成を専門家に依頼する場合には別途費用が必要になります。
よしむら行政書士事務所の場合
・事前調査:22,000円~
 現地調査、法務局への事前相談など
・申請書作成代行:165,000円~
 申請書、添付資料作成など

合計でいくら必要になるのか

条件のおさらい
・現況、登記地目ともに「田」で地積は800㎡の1筆
・農業振興地域内の農用地
・東側、西側:農地、北側:市道、南側:用水路
・境界杭は見当たらない(復元を土地家屋調査士に依頼)
・土地改良区の賦課金を毎年支払っている
・事前調査、申請書作成をよしむら行政書士事務所に依頼した

概算ですが以下のような金額になりそうです。
① 審査手数料:14,000円
② 土地改良区 地区除外決済金:200,000円
③ 境界杭の復元:300,000円
④ 国庫帰属の負担金:966,000円
⑤ その他:200,000円
合計:1,680,000円

※③ 帰属の負担金は、帰属の承認が通知が到達した翌日から30日以内に納付することになります。

農用地の場合、地区除外決済金が必要です。
また、負担金が高くなります。
境界杭の復元が不要だったり、事前調査や申請書作成は自分でやることができれば費用は抑えられそうです。

よしむら行政書士事務所では、相続土地国庫帰属に関する事前調査、申請書作成代行を行っています。
お困りの方、詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。

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